里山工学の方法論
自然現象のみならず社会・文化的な事象におよぶ様々なデータベースを地理情報システム(GIS)上で重ね合わせることで、里山の将来像を予測し、地域経営の計画に活かすことが里山工学の方法論の柱となります。
例えば、有用植物の自生地をGIS地図上にプロットし、その場所の地形・地質・微気候データベースと重ね合わせることで自生適地条件が導かれます。これをもとに栽培、収穫、輸送などにかかる手間やコストも加味した栽培適地が選定され、持続可能な土地利用計画へとつながります。
また里山工学の方法論では、無人航空機、ドローン、IoTセンサーなど様々なセンシング技術の開発・適用と、膨大に集積されるデータを活かした解析やシミュレーション技術の開発・応用が期待されます。そのために土木、建築、機械、情報など多方面の工学分野の蓄積も動員されます。
さらには工学の理念--役に立つ何かを創造する--に基づき、工学以外の諸学の方法も総動員するのが里山工学の方法論です。例えば、土地利用の変遷を知るには、生態学による生態系遷移のモデルを導入すると同時に、歴史学によって古文書史料から石高、人口を割り出し、土地の生産性を復元的に考察します。また社会学、経済学、民俗学の方法を用いて集落の現況を分析し将来予測まで導きます。
里山工学は実践的学問です。論文成果の地平で完結することなく、常にその先の社会実装を念頭に置いています。実績としては、宿毛市でバイオマス火力発電所を、また馬路村では小水力発電所をそれぞれ建設、稼働させたことが揚げられます。