UAVを用いた植生観測
はじめに
里山研究フィールドでは,2019年4月5日から月に2・3回,UAVを用いた植生観測を行っています。そこで,本ページでは観測データの内,オルソ画像を公開しています。
観測データについて
観測対象エリアは,里山研究フィールド内 300×300m のエリアです。図 1 に観測エリアを示します。
画像の方位は,上部を北として表示しています。里山研究フィールドは谷地形であるため午前は東側の西斜面,午後は西側の東斜面に大きなカゲを生じやすく,起伏に富んだ環境です。周辺の植生は,常緑針葉樹や,常緑広葉樹,落葉針葉樹,落葉広葉樹,竹林や草地といった豊富な植生が見られます。また人工林のスギ,ヒノキも多く見られます。
図 1 観測エリア
主な撮影機材とカメラ設定
植生観測には 2台のマルチコプター型 UAV を用いています。 図2に使用した UAV の写真を示します。主に DJI Inspire2 を用いて植生観測を行っていますが,諸事情により 11 月初旬 から 12 月初旬までは,同メーカーの Inspire1 を用いました。
図2 観測エリア
カメラの諸元と設定
次に UAV に搭載するカメラの諸元と設定を表 1 に示します。
撮影は UAV のメーカーが提供するオペレーションア プリ「DJI GS Pro」を用いた自動飛行によって行いました。 操作設定では,カメラを垂直下に向けた等距離間隔撮影を設定しており,Inspire2 における撮影コース上のオー バーラップ率は90%,コース間のサイドラップ率は75%です。Inspire1 のレンズは視野角が広いため,撮影コー ス上のオーバーラップ率は90%,コース間のサイドラッ プ率は85%になりました。対地高度は,離発着地点で 135mに固定しています。その結果,離発着地点における地上分解能は,Inspire2が約 3cm,Inspire1が約6cmでしたが,観測フィールドは谷地形で高低差がおよそ80mあるうえに,植生の樹高は様々です。そのため地上分解能は一律ではありません。
表1 カメラの諸元と設定
植生観測シーンの一覧
里山研究フィールドで行っているUAVを用いた植生観測データを表 2 に示します。観測エリアにおける観測時間は撮影開始から終了まで約10分かかり,撮影枚数は毎回220枚程度の連続写真です。
注釈1:観測失敗したデータはリストから除外しているため,IDは連番ではない。
注釈2:太陽高度と太陽方位角は緯度 33.646269, 経度 133.718215 地点における,観測中央時間(観測開始時間から終了時間の間)を用いて計算した。
注釈3:曇りの日は太陽高度と太陽方位角は計算していない。
オルソ画像について
公開しているオルソ画像の撮影範囲は300×300mで,地上分解能は20cm/pixelです。ダウンロードファイルサイズは約26MBです。
基準点を用いての幾何補正には,Agisoft 社の写真測量ソフトウェアMetashapeを用いており,平面直角座標系の四国区域(区域番号IV)にて整理しています。
そのためGISソフトを使えば図3のように同じ位置で重ね合わせることができます。図3を見ると春に葉が展葉し,夏には生い茂り,秋に紅葉し,冬には葉が散る様子が見られます。
図3 2019/4/5から2020/3/25までのオルソ画像
オルソ画像の幾何補正について
観測シーン間で植生変化を比較するため,本研究で使用する観測シーンは,地上基準点をもとに幾何補正を施しています。図4は使用した地上基準点の位置です。基準点座標の計測には,GNSS受信機(TOPCON社/HiPerSR)を用いてスタティック測位をすることで取得しています。観測エリアは標高差が大きいため,UAV の離発着地点周辺や周辺道路沿いの低地から高地にかけて,地上基準点 P を7点, 幾何補正の精度検証のための検証点 V を1点を設けました(※1)。
基準点を用いての幾何補正は,Agisoft社の写真測量ソフトウェアMetashapeを用いて,SfMによる点群作成時に行っています。幾何補正の誤差は,表3に示します。表3には,点群上の各基準点と地上基準点のx・y・z座標軸毎の誤差についてまとめています。誤差(m)と誤差(pix)は三次元における誤差を意味しています。プロジェクションとはSfMで使用した画像中にそれぞれの地上基準点が写っている画像の枚数です。基準点PのRMSE(Root Mean Square Error)は検証点Vを除く,x・y・z座標ごとの値を用いて計算しています。
※1:一部の観測シーンには図4に示されていないP8,P9を使用している観測シーンがあります。
図4 基準点